文月です。

トランスジェンダーの葛藤を的確に描いた作品と評判を聞いていた作品を本屋さんで発見して即買い!!
一気読みしてしまいました…。

以下、おっそろしい勢いでネタバレします!!
「これから読むよー!」という方は閲覧にご注意ください(^▽^)

☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;
「にくをはぐ」とっても簡単なあらすじ

小川千秋は男だ。
猟師の父が仕留めた獲物を捌く姿をライヴ配信するYouTuberとして活動している。
本当は父と一緒に猟師として山に入りたいが、彼の体が女性のそれであるがために千秋は父に”男”と認識してもらえず、山にも入れてもらえない。

そんな折、父は唐突に自分が癌であることを千秋に告げた…。

☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;☆;+;。・゚・。;+;

本作は、表題作「にくをはぐ」をはじめ、心の奥深くにぐっと迫るものを持つ名作たちが1冊にぎゅっと詰まった超お得な1冊!

文月個人は、「にくをはぐ」とその後日談「にくをはぐ 後日談」そして「恋するダビデ」が特に好きです。
「恋するダビデ」の、”僕が人間だったら”の一言でありえないくらい涙出ました。
なんでそんなに泣いたのかサッパリ説明できないのですが、もう大泣きです。

ほぼほぼコメディなのに、そこで「僕が人間だったら」はずるいぞ!!

なんかよく分からんがずるい!!

そして表題作「にくをはぐ」。
千秋の苦しみ、葛藤。
心と体の不一致という苦しみは当事者にしか分からないものかもしれませんが、ここで描かれているのは「性別」という檻に人を閉じ込めようとする世間の同調圧力そして”子どもの幸せ”を願うあまり、子どもから自由と幸せを奪ってしまう親の姿。

この2つなら、マジョリティであっても心あたりがあるはず。

千秋の父は決して悪人ではありません。
むしろ千秋の幸せを心から願い、そのためなら何でもしようとする愛情深い父親です。

ただ、千秋の幸せを願うあまり自分にとっての「娘の幸せはこれだ」という思い込みを無意識に千秋本人にとって絶対的に良いことだと思ってしまっているだけ。

親なら誰しも子どもに幸せであってほしいでしょう。
不幸にだけはなってほしくない。飢えてほしくない。痛くて辛い人生を歩んでほしくない。

だから自分が敷いた「幸せへの道」を子どもが外れようとすると焦り、激高し、無理やりにでも連れ戻そうとする。
自分が描いている「この子の幸せ」が、本人にとって幸せなものとは限らないとは夢にも思わずに。

千秋の父親も、同じです。

そして千秋もまた、父を愛するがゆえに自分の幸せを押し殺して父の希望に沿おうとします。
それが自分自身をどれほど傷つけ苦しめるか、痛いほどよく分かっているのに。
親に対して「それは違う、自分の幸せはこうなんだ」とハッキリ言える子というのは、特に日本ではそう多くないのかもしれませんね。

本編で千秋がもし、父の希望に沿うことを貫いてしまっていたら、きっと父という「自分を当てはめるための型」を失い、生きることすら難しくなったかもしれません。

「自分らしくある」ことを諦め、父親が自分にどうなってほしいかを最優先する大人びた子どもだった彼が、やっと見せた溌剌とした笑顔。

「自分であること」を赦されて、はじめて彼は子どもになれたのだろうと思います。

そして、この作品を彩る最高の脇役。
それが高藤!!

作中で千秋も言っていますが、彼が本当に本当に本当に、最高にカッコイイ男なんですよ!!

千秋に好意を伝えたら「自分は男だから」とフられたとき、腐るでも負け惜しみを言うでもなく、その言葉の意味を自分なりに調べて彼の理解者となろうとしたところ。

そして自分をフった千秋に友として長年寄り添い、彼のために陰でいろいろと調べたり心から心配したりしているところ。

人間の器、大きすぎません!?!?高藤!!!
どんだけイケメン!!!

千秋に月経がきてしまい、血で汚れたズボンが突きつける事実に千秋の心が折れかけたとき、迷わず自分のズボンを履かせてやったところ。

「千秋が助かったならよかった。俺はどう思われてもいいんだから…それなら良かった」

と自分を差し置いて傷つく千秋を優先したところ。

高藤、どんだけ人の心を大切にできるの!?!?
男前すぎ!!!

高藤と結ばれる人は幸せだなぁ…!


遠田おと短編集「にくをはぐ」、LGBTを的確に扱った作品としても、ヒューマンドラマとしても楽しめる良作でした。
気になった方は是非ご一読を!

(文月)